夜空を華麗に彩る花火。 人々に夏を告げるその一発一発に情熱をそそぐ花火師たち。今回は縁あって高知県にある高村火薬店さんにお話を伺いました。
花火だけでなく、銃砲のマニアックな知識まで教えていただき、ちょっと男心をくすぐるお話になってるかも。
髙村俊寛 有限会社高村火薬店 取締役営業部長 高知県高知市大津甲216-1 主要業務 ①産業火薬②銃砲③花火
銃砲、そして弾のアレコレを教えてもらいました!
●さっそくなんですが、あのシャッターの中には何があるのでしょうか?
髙村:銃砲を保管しています。一番安いものだと11万円くらい。モデルが古いので。ここで保管されている銃砲はほとんどが中古なんです。
●弾の飛距離ってどのくらいなんでしょうか?
髙村:たとえばこの銃だと弾の種類にもよりますが、だいたい30〜40メートルくらいが殺傷能力のある射程範囲です。
散弾の中には鉛のつぶつぶが入っていて、これが少しずつ広がりながら飛んでいきます。そしてそれらがまとまって当たると獲物を殺傷できます。
●弾の価格ってどれくらいなんでしょう?
髙村:射撃用なら 一箱1500円 程度ですね。25発入りで。これが基本だと思います。
●弾の使用期限ってあるんでしょうか?
髙村:基本的に、製品自体は保管庫に入れておけば何年でも大丈夫なんです。けど、買ってから 2年以内に使い切る のが規則として決まっているんです。
ちなみに、ライフルってありますよね?日本では 散弾銃を持ってから10年経過しないとライフル銃は持てない んですよ。
髙村さんいわく、ライフル銃はかなりの飛距離が出るらしい。まさしくゴルゴ13の世界。三脚を立て、スコープを使って照準を定める。その発射音の凄まじさと射速は想像を越える。
また、使用する弾の種類も様々だ。弾のなかに入っている鉛の数、大きさを狙う獲物によって変えていく。捕獲した獲物を食用にするかどうかでも弾の種類は異なるのだそうだ。
●ほかにも銃に関する規制ってあるのでしょうか?
髙村:日本では散弾銃は3発までしか連発できないようになっています。アメリカなんかではかなり連発できますが、日本では規則として決まっています。 ●偶然目に入ったのですが、これって薬莢(やっきょう)でしょうか?
髙村:そうですよ。最近は少なくなりましたが、こういった薬莢を使って合法的に自分で弾をつくることもできるんです。マニアックは方はいろいろとカスタマイズする感じですね。
●髙村さんご自身は狩猟したりするのでしょうか?
髙村:基本的にはやっていません。そのかわりではないですが、高知市と南国市から要請されて、有害鳥獣駆除をやっています。タヌキとかハクビシンとかですね。
●猟をしている人の数って変わってきてるんでしょうか?
髙村:今は猟をやめる人が多いですよ。これは高知だけということではなく、全国的にそうですね。銃を持っている人の7割以上がすでに60歳以上。
40歳以下は3.8% ですので、10年経ったら持つ人が今よりかなり減っているでしょう。
●銃の免許を取るにはどれくらいの費用がかかるんでしょうか?
髙村:猟銃の免許を持つまでには10万円程度費用が必要で、ガンロッカーなど銃の保管場所も必要です。期間としては最短で3ヶ月くらいでしょうか。
ちなみに銃って1銃1許可制といって、免許証に「あなたの銃はこれ!」と規定されているんです。なので、普通の人はそれ以外の銃にさわってはいけません。
社員がそうなると困るので、銃砲店や製造会社の方は、これとは別に公安委員会から業務上に限り他人の銃を扱うことができる許可証が与えられています。
高知県で唯一の花火鑑賞士
●花火にも免許があると聞きました。
髙村:そうですね。こっちは銃よりも比較的取得しやすい免許です。1種と2種免許があるのですが、1種を取得して5年経過しないと2種はとれません。
2種がとれると、尺玉を上げるときの現場責任者になることができるんです。 (煙火消費保安手帳 | 公益社団法人 日本煙火協会)
髙村:それからこれは趣味資格なんですが、高知県で持っているのは僕だけなんです。
花火鑑賞士 このカードは、花火鑑賞士人的試験合格者に対して、NPO法人「大曲花火倶楽部」が発行するもので、表記のものが花火に関する優れた知識を有することを確認するものです。 秋田県大仙市 NPO法人 大曲花火倶楽部
髙村:この資格は、花火を見てその種類がわかる!というようなマニアが取るものですね(笑)。わたしも秋田の大曲まで片道4時間半かけて試験を受けにいきました。 ●受けにいくきっかけはあったのでしょうか?
髙村:タレントの 西村知美さんって資格マニア で、これをもっているらしいんです。テレビを見て初めて知り、お客さんの立場から花火を考えるきっかけになればと思い、受けてみました。 それからその試験、事前の講義を理解していないと、割としっかり落とされるんです。テスト、小論文もあって…。ただ講師の方が地元の有名な花火屋の社長さんだったりするので、試験に落ちてもこの人に会えるならいい!という感じでした。 ちなみに受験料は6000円だそうだ。
●髙村火薬店では、花火の開発はしているのでしょうか?
髙村:ぼくらは花火の製造はしていないんですよ。四国全体でも徳島以外では製造しているところはありません。なんでぼくらは 打ち上げ専門業者 ですね。仕入れた花火でどう魅せるかという仕事です。
ここから、髙村さんに興味深いお話を聞いた。
髙村:ちなみに 東日本と西日本では花火の質が違うんです。東日本では冬の間に室内でつくります。そして晴れ間を見計らって乾燥。それに対して西日本では、気候がよいのでどんどん大量生産していくことが多いです。
花火ひとつひとつにかける時間が東西では大きく違う傾向にあります。ですので、花火の品評会で賞を取るのはやはり東日本が多いんです。広がり方や粒の大きさが本当に美しいと僕も思います。
●髙村火薬店で仕入れる花火の種類ってどういうものなんでしょうか?
髙村:花火業界全体として、8割以上は中国製ですね。うちもそうです。ただ、中国製だけというのもいけないので、ベトナム製の花火も仕入れています。高知ではうちだけだと思いますよ。
おもしろいのが、ベトナムの人って勤勉で日本人に気質が近い と言われますよね。だから、花火の質も日本製のものと似ていて、なおかつ価格も安いんですよ。
●今後はどのように事業を展開していくのでしょうか?
髙村:産業火薬、銃砲、花火の三本柱で今はやっています。ただ今後自分たちの力で伸ばせる可能性があるのは花火だと思っています。
けど、少ない人数の中でできることには限界があるので、花火だけものすごく突出させるというのは正直な話、難しいとも思っています。産業火薬、銃砲についても「その後の火薬の管理」といった大切な仕事もあるので。 全く別の事業も考えてみたらと提案していただいたこともありますが、とにかくこの3本柱を伸ばしていけたらと思っています。
ミュージック花火って知ってますか?
今、花火業界ではブームになっているミュージック花火。音楽のリズムに合わせて打ち上げを行い、新たなエンターテインメントとして注目を集めている。今年8月、TBSテレビ「夢の扉+」でこのミュージック花火が取り上げられ、話題となった。 夢の扉+中井貴一▼最先端!“花火と音楽の調和”で夏の夜空が変わる![字] | TBSテレビ
髙村:ミュージック花火は見せ方が重要になってきます。そこでデザイナーや、コンピュータを操作するプログラミングに長けた人が花火業界で活躍する事例も目立ってきていますね。
貴重なお話ありがとうございました!
というわけで今回は高知県の髙村火薬店さんを取材させていただきました。初対面にも関わらず、業界全体の話からマニアックな話までうかがうことができました。ありがとうございました。 火薬業界も高齢化について例外ではありません。どこも後継者がいないために、火薬業の比率を落とし、別の業種への移行していくところもあるのだと。
つまり人員不足の中で、新たな価値をつくっていかなければいけません。異業種とのコラボはこの業界にも光をさしてくれそうです。
Innovator No.31 髙村俊寛
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